映画『パターソン』のあらすじをお探しですか?
この作品は2016年にジム・ジャームッシュ監督が世に送り出した静かで美しいヒューマンドラマ。
カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品され、主人公の愛犬が「パルム・ドッグ賞」を受賞したことでも話題になりました。
どんな話なのか簡単に言うと「ニュージャージー州のバス運転手が詩を書きながら過ごす何気ない一週間を描いた物語」ですよ。
私は月に20本の映画を観る映画オタクなんですが、この作品は派手さはないものの心に静かに染み入ってくる名作だと断言できます。
これから観る方のために、ネタバレなしであらすじを簡単に・詳しく解説していきますね。
結末や感想も交えながら、この映画の魅力をたっぷりお伝えしていきますよ。
映画『パターソン』のあらすじや内容を簡単に
映画『パターソン』のあらすじを詳しく(ネタバレなし)
主人公パターソンは、自分と同じ名前の街に住むバス運転手である。彼には密かな楽しみがあった。それは日々の出来事から着想を得て詩を書くこと。毎朝6時15分頃に妻ローラの隣で目を覚まし、朝食を食べて仕事に向かう。バスを運転しながら、乗客の会話や窓の外の風景から詩の言葉を紡いでいくのだ。
妻のローラは夢見がちで創造的な女性。ギターを習い始めたり、カップケーキを焼いて市場で売ろうとしたり、家の中を白黒の幾何学模様で埋め尽くしたりと、次々と新しいことに挑戦していた。パターソンは妻の奔放な行動を微笑ましく見つめ、彼女への愛を詩に込めていく。
夜の散歩は彼の日課。イングリッシュ・ブルドッグのマーヴィンを連れて街を歩き、途中のバーで一杯だけビールを飲んで帰る。バスの中では双子の乗客に出会い、詩を書く少女と言葉を交わす。そんな何気ない日常の中に、小さな驚きや発見が散りばめられていた。平凡だが愛おしい日々が、月曜日から日曜日まで一週間かけて丁寧に描かれていく。
『パターソン』を観た感想
正直に言うと、最初の20分くらいは「このまま日常的な描写が続くだけ?」って思いましたよ。
だって本当に何も起きないんです。
主人公は朝起きて、バスを運転して、詩を書いて、犬の散歩をして、ビールを飲んで帰る。
それだけなんですよね。
でもね、観ているうちにこの「何も起きない」ことの美しさに気づかされるんです。
アダム・ドライバーが演じるパターソンの表情がすごく良くて、言葉少ない中にも深い思索や愛情が滲み出ているんですよ。
バスの運転席で詩を書くシーンは何度も出てくるんですが、そのたびに画面に詩の言葉が浮かび上がる演出が秀逸でした。
詩そのものも味わい深くて、日常の中の小さな発見や妻への愛が込められていて、思わず画面を一時停止してじっくり読みたくなるほど。
妻ローラを演じるゴルシフテ・ファラハニも魅力的でしたね。
夢見がちで創造的で、でも愛情深い女性を生き生きと演じていて、パターソンが彼女を愛する理由がすごく納得できるんです。
白黒の水玉やストライプで家中を埋め尽くす彼女の感性は、観ていて微笑ましくなりました。
個人的にグッときたのは、バスの中で出会う双子の少女が詩のノートを見せてくれるシーン。
パターソンが少女の詩を真剣に読んで、その才能を認める姿に心が温かくなりましたよ。
詩を書く者同士の静かな交流が、本当に美しかったです。
夜のバーのシーンも良かったですね。
常連客や店主との何気ない会話、そこに流れる穏やかな時間。
特に金曜日の夜に起きるちょっとした騒動は、映画に適度な緊張感を与えていて面白かったです。
そして週末に起きる出来事。
これは詳しく書けないんですが、パターソンにとって大きなショックとなる事件が起こります。
その時の彼の落胆ぶりが痛いほど伝わってきて、私も一緒に落ち込んでしまいました。
でも日曜日の朝、滝の前のベンチで永瀬正敏さん演じる日本人詩人と出会うシーンで涙腺が緩みましたね。
「白紙のページにも可能性が広がる」という言葉が、失意のパターソンを(そして観ている私を)優しく励ましてくれるんです。
この映画の素晴らしいところは、大げさなドラマを排して、日常の中にある詩的な瞬間を丁寧にすくい取っているところ。
マッチ箱のデザイン、双子というモチーフの繰り返し、滝の音、カップケーキの焼ける匂い(これは想像ですが)。
そういった細部が積み重なって、観る者の心に静かに響いてくるんですよ。
ジャームッシュ監督らしいミニマルな演出と、ゆったりとした時間の流れ。
正直、万人受けする映画ではないかもしれません。
アクションやサスペンスを期待する人には物足りないでしょう。
でも、日常の美しさや詩的な瞬間を味わいたい人には、これ以上ない至福の118分になるはず。
観終わった後、自分の毎日がいとおしく思えてくる。
そんな不思議な魔法をかけてくれる映画でした。
『パターソン』の個人的な評価
評価項目 | 点数 | コメント |
---|---|---|
ストーリー | ★★★★★★★☆☆☆ | 派手な展開はないが繊細で詩的な構成 |
感動度 | ★★★★★★★★☆☆ | 静かに心に染み入る感動がある |
エンタメ性 | ★★★★★★☆☆☆☆ | じっくり味わうタイプで万人向けではない |
総合評価 | 76点 | 日常の美しさを再発見させてくれる良作 |
『パターソン』の作品情報
項目 | 詳細 |
---|---|
公開年月日 | 2016年5月16日(カンヌ国際映画祭) 2016年12月28日(アメリカ限定公開) 2017年8月26日(日本公開) |
監督 | ジム・ジャームッシュ |
脚本 | ジム・ジャームッシュ |
原作 | オリジナル脚本(原作なし) |
キャスト |
|
上映時間 | 118分 |
受賞・ノミネート歴 | 第69回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品 パルム・ドッグ賞受賞(イングリッシュ・ブルドッグのネリー) |
製作国 | アメリカ合衆国、フランス、ドイツ |
主題歌 | 特定の主題歌なし(ミニマルなBGM使用) |
ジャンル | ヒューマンドラマ、インディペンデント映画 |
配給 | 日本:ロングライド アメリカ:Amazon Studios |
制作会社 | Inkjet Inc.、Animal Kingdom、Amazon Studios |
視聴方法 (2025年10月現在) |
Amazonプライム・ビデオ、U-NEXT、 Hulu、Leminoなどで配信中 DVD・Blu-rayも発売中 |
あの作品が好きなら『パターソン』も好きかも?似ている映画3選
『パターソン』のような静かで詩的な日常を描いた映画が好きな方に、ぜひおすすめしたい作品を3つ紹介しますね。
どれも大きな事件は起きないけれど、観終わった後に心が温かくなる良作ばかりですよ。
『PERFECT DAYS』(ヴィム・ヴェンダース監督)
2023年に公開されたヴィム・ヴェンダース監督による日本を舞台にした作品。
役所広司さん演じる主人公が、東京の公共トイレの清掃員として働きながら淡々とした日々を送る姿を描いています。
朝起きて、仕事をして、音楽を聴いて、写真を撮って、銭湯に行く。
その繰り返しの中に見出される美しさや喜びが、『パターソン』とまさに同じテーマなんですよね。
主人公の創造的な趣味(パターソンの詩、こちらは写真)、一週間という時間軸、最後に訪れる出会いによる救い。
構造的にも非常によく似ていて、『パターソン』が好きな方なら間違いなく気に入るはずです。
『ナイト・オン・ザ・プラネット』(ジム・ジャームッシュ監督)
同じジム・ジャームッシュ監督が1991年に撮ったオムニバス映画。
ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキの5都市で、タクシー運転手と乗客の一夜を描いた作品です。
ウィノナ・ライダー、ジーナ・ローランズ、ロベルト・ベニーニといった豪華キャストが出演しています。
『パターソン』と同じく、特別な事件は起きないんです。
でも、偶然乗り合わせた人々の会話や沈黙の中に、人生の深みや詩的な瞬間が溢れているんですよ。
繰り返される日常、他者との束の間の出会い、そこに潜む物語性。
ジャームッシュ監督らしい静かな視線が心地よい一作です。
『フランシス・ハ』(ノア・バームバック監督)
2012年のモノクロ映画で、グレタ・ガーウィグが主演・共同脚本を務めた作品。
ニューヨークで夢を追うダンサー、フランシスの冴えない日常を軽やかに描いています。
大きな成功も劇的な失敗もない、ただ不器用に生きる彼女の姿が愛おしいんです。
『パターソン』と共通するのは、主人公の微細な感情や生活のリズムへのフォーカス。
派手さはないけれど、そこに確かにある幸せや希望を丁寧にすくい取っているところが似ていますね。
モノクロ映像の美しさも詩的で、観終わった後に優しい気持ちになれる作品ですよ。
振り返り
映画『パターソン』のあらすじを簡単に・詳しく解説してきました。
バス運転手パターソンの何気ない一週間を通じて、日常の中にある詩的な瞬間や美しさを再発見させてくれる作品でしたね。
派手な展開はないけれど、静かに心に染み入る感動がある。
結末までネタバレなしで紹介しましたが、ぜひご自身の目で確かめてほしい映画です。
アダム・ドライバーの繊細な演技、ゴルシフテ・ファラハニの魅力的な妻役、そして永瀬正敏さんの重要な役どころ。
観終わった後、きっとあなたの毎日がもっと愛おしく感じられるはずですよ。
コメント